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「勘違いなさっているようですが、ここは娼館ではありません」
「……え?」
「コレット様、今は何も考えずにご自分のペースで構いませんので、まずは食事をお願いいたします」
「食事を……?」
「はい。コレット様のお口に合わなければ教えてくださいませ。御用がありましたらそちらに置いてあるベルを鳴らしてください」
コレットはメイメイの視線の先にあるベルを見ていた。
「私がいても落ち着かないと思いますので、失礼いたします」
メイメイは深々とお辞儀をして去って行く。
(ここは娼館ではないの?食事をしろということは、もしかして仕事をするには痩せすぎているのかしら……)
コレットはもう一度、ぐるりと邸内を見回した。
少し古い感じはするが、どの調度品も高級そうに見える。
先ほど助けてくれた青年がこの屋敷の主人なのだろうか。
だとしても若すぎるような気がした。
名前も知らない青年の優しい微笑みと温かい手のひらの感触が今も残っていた。
(わたくしのことを知っているようだった。でもどうして?)
コレットは名前を名乗った覚えもないし、今まで社交界で彼と会ったことはない。
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