一章

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(年はわたくしよりも上かしら……お父様たちの知り合い、というわけでもなさそう。珍しい髪色と瞳の色だったわ) ホワイトアッシュの髪とアメジストのような神秘的な瞳、助けてくれた先ほどまでそばにいてくれた青年のことが頭から離れない。 『今は何も考えずにゆっくり休んでください』 そう言われたものの、今後のことを考えずにはいられなかった。 ──ぐうぅ 考え込んでいたコレットは自身の大きなお腹の音に頬を赤く染めた。 意識がそこに集中すると急にお腹が空いてくる。 コレットは先ほどメイメイが置いていったトレイの中を覗き込む。 食べやすく一口サイズに切られたフルーツの盛り合わせと、縁が赤いお皿にはリゾットのようなものが入っている。 (……美味しそう) 紅茶のカップを置いてコレットはベッドの上を移動してからサイドテーブルへ体を寄せる。 温かいリゾットは食べやすいように冷ましてあるようだ。 手を伸ばしてスプーンを持ってから、くるりとリゾットを掻き回す。 白くとろみのある液体をスプーンですくって口に運んだ。 じんわりと広がるミルクの味と鼻から抜けるスパイスの香り。
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