一章

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そして窓から見える青空を見ていた。 包み込むような陽の光と、胃に優しい食事はコレットの体を温めてくれる。 今は寒さも苦痛も感じない。 コレットは静かに瞼を閉じた。 見えない鎖から解放されたようにスッキリとした感覚に深呼吸を繰り返す。 (わたくしに、まだこんな感情が残っていたなんてびっくりね) こんな風に感情を外に出せたのはいつぶりだろうか。 コレットは壁に寄りかかるようにして景色を見ていたが、そのまま眠りについてしまったようだ。 だから扉をノックする音に気づくことはなかった。 そっと開く扉には先ほど出て行ったメイメイと青年の姿があった。 青年は壁にもたれるようにして眠っているコレットの方に向かうと背に手を回して抱えてから、そっとベッドへと下ろす。 そして親指でコレットの頬に流れていた涙を拭った。 「メイメイ……彼女をここまで追い詰めたのは誰だ?」 「今、ウロたちが調べております」 「なるべく早く調べろ。できるだけ情報を集め、人員を増やせ。内情が分かり次第、すぐに僕に報告しろ」 「はい、すぐに手配いたします」 「コレットをここまで追い詰めて苦しめた奴らを許すわけにはいかない……絶対にだ」 「かしこまりました」
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