二章

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コレットは地味な使い古しのドレスでリリアーヌは新品で流行りのドレス。 愛されているのはどちらか、一目見ただけで明白だろう。 リリアーヌは完全に浮かれたていた。 そしてリリアーヌは知らなすぎたのだ。社交界がどんな場所かを…… リリアーヌは自らをアピールするように声を掛けて回る。 社交界でのマナーはずっと前に習ったような気もするが、もう忘れてしまった。 (もしかしたらこの国の王子様だって、わたしを見たら夢中になるかもしれないわ!) 令嬢たちはリリアーヌを見て、コソコソと何かを呟いている。 それを見て嫉妬の視線だと思い、ますます気分がよくなった。 だからコレットから奪ったエスコート役のディオンがいなくなったことにも気がつくことなく、リリアーヌは煌びやかな会場にうっとりしていた。 今まで仮病を使っていたことを後悔するくらいに。 (こんなに素敵な気分になれる場所があるなら、もっと早く来るべきだったわ……!) リリアーヌは天にも昇る気持ちだった。体は羽の様に軽い。 部屋の中では得られないキラキラとした美しい世界だ。 「ごきげんよう。あなたはだぁれ?」 「わたしはリリアーヌ・ミリアクトですわ!今日が初めてのパーティーなのっ」 しかしそんな素晴らしい時間はコレットによって遮られてしまう。 コレットはリリアーヌの前に出ると、注目を奪うように頭を下げて何かを必死に話していた。 舞台で気持ちよく演じているのに引き摺り下ろされたような、そんな不満に怒りが込み上げてくる。 リリアーヌが文句を言う前に怒鳴り声が耳に届く。
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