二章

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しかしコレットは何を思ったのかハサミを自分に向けて髪をバッサリと切り落としたのだ。 『さようなら』 その言葉が妙に重たく感じた。 両親はコレットを除籍すると言ったが、リリアーヌはそこまで望んでいない。 コレットはリリアーヌの代わりに『可哀想』でいてくれないと困るのだ。 部屋に閉じこもったかと思いきや、火を起こしたらしくミリアクト伯爵中が大パニックだった。 (信じられないわっ……!コレットお姉様は頭がおかしくなったのかしら) 扉を遮る家具を人を集めて退かしてみると、部屋いっぱいに広がる焼けこげた匂い。 どうやら伯爵邸を燃やそうとしたのは失敗したようだ。 そこには開いた窓とヒラヒラと揺れるカーテンがリリアーヌの瞳に映っていた。 冷たい風が吹き込んで窓ガラスを揺らしていた。 両親は頭に血がのぼっているのか「除籍してやるっ!」「恩知らず」「のたれ死ねばいい」と叫び、リリアーヌが引き止める間もなく手続きをするためにその場を後にした。 「そのうち戻ってくるだろう」 ディオンのその言葉に我に返る。 (そうよね、そうに決まっているわ……!) しかし、コレットはそのまま姿を消して戻ってくることはなかった。 (リリアーヌside end)
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