二章

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そう言ってコレットを揶揄うように笑いながらスプーンで遊ぶ青年を見て、コレットは小さく首を横に振る。 再び皿に入ったリゾットを掻き回している青年に問いかけるようにして唇を開いた。 「あなたは……誰ですか?」 「…………」 「どうしてわたくしに優しくしてくれるのでしょうか」 コレットがそう口にしても青年は名前を明かすことを拒絶しているようにも見える。 瞼を伏せてコレットと目を合わせないようにしているように思えた。 そしてスプーンをコレットの口に運んでいく。 「むぐ……」 「名を明かしたら、コレットはきっと悲しい顔をするでしょう」 「え……?」 「コレットを傷つけるくらいなら、このままでいいとそう思っているのです……ですが知らない男に世話されるのは不安ですよね」 寂しそうにしている青年はスプーンを置いて、チラリとこちらを見て笑った。 けれどその仕草が見覚えがあるような気がした。 (わたくしはこの寂しそうな紫色の瞳を知っている。こうして……パーティーの度に二人きりで過ごしていたけど会えなくなってしまったわ) 辛い記憶で蓋をしていた部分がそっと開く。 (どうして気が付かなかったのかしら。でも雰囲気も性格も全然違う……ありえないのに)
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