二章

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コレットが毎回、城に行って会うのを楽しみにしていた一人の男の子がいた。 彼のことが大好きで、結婚したいと思うほどに。 『わたくし、ヴァンのことが大好きよ!』 『……ありがとう。僕もコレットが好きだ』 今思えば、この日が人生で一番幸せな日だったのかもしれない。 裏切られて悲しい、いきなりいなくなって怒っているという気持ちは不思議となかった。 それはコレットが先にヴァンに黙ってパーティーに出なくなったことが原因ではないかと思っていたからだ。 お揃いのおもちゃの指輪は燃やした手紙の奥にしまっていたことを今になって思い出す。 (もう燃えてなくなってしまったかしら) 父に紹介しようとしていたことをきっかけにコレットは伯爵邸から出ることはできなくなり、二度と会えなくなってしまった。 コレットの意見は真っ向から否定されてしまい、伯爵邸から出られなくなった。 彼がいなくなった絶望感は今でも胸を抉る。 「まさか……そんなはずないわ。彼は男爵家か子爵家の令息じゃないの?」 「………」 「突然、わたくしの前から消えてしまって……それで」 コレットはそう言って青年に手を伸ばす。 ホワイトアッシュの髪と肌にはあの時とは違って艶があり美しい。
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