二章

24/48
前へ
/234ページ
次へ
青年は首元のチェーンを引くと、コレットがヴァンに渡したおもちゃの指輪があった。 幼いながらに雑貨屋でヴァンを思い、迷って決めた指輪を見間違うはずもない。 もう傷だらけでボロボロになっているが、ヴァンはネックレスにして持っていたのだろう。 コレットの目からハラハラと涙が溢れた。 無意識に手を伸ばして確かめるように彼の頬を撫でる。 「本当にヴァンなの?」 「はい。僕は〝ヴァン〟です」 コレットはあの時のことを思い出すと胸が痛い。 そしてヴァンが消えて姿を消した日から、コレットから光が消えたのだ。 「どうして……いなくなってしまったの?」 コレットの気持ちが溢れていく。 ヴァンと二度と会えなくなる日が来るなんて思わなかった。 辛い記憶を思い出さないようにしていた。 けれどヴァンもコレットが指輪を渡した日の夜、国を出て会えなくなってしまったらしい。 「やはり悲しませてしまいましたね。あの時の僕は無力で弱くて……苦しむコレットを救うことはできませんでした」 「え……?」 「いきなり消えて申し訳ありません。ですがコレットを忘れたことは一度もありませんから」 ヴァンはそう言ってコレットの髪を優しくすいた。 「今回、僕は君の幸せを見届けられたら、それでよかったんです」 「わたくしの、幸せ……?」 「コレットの前に姿を現すつもりはなかった」
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1152人が本棚に入れています
本棚に追加