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青年は首元のチェーンを引くと、コレットがヴァンに渡したおもちゃの指輪があった。
幼いながらに雑貨屋でヴァンを思い、迷って決めた指輪を見間違うはずもない。
もう傷だらけでボロボロになっているが、ヴァンはネックレスにして持っていたのだろう。
コレットの目からハラハラと涙が溢れた。
無意識に手を伸ばして確かめるように彼の頬を撫でる。
「本当にヴァンなの?」
「はい。僕は〝ヴァン〟です」
コレットはあの時のことを思い出すと胸が痛い。
そしてヴァンが消えて姿を消した日から、コレットから光が消えたのだ。
「どうして……いなくなってしまったの?」
コレットの気持ちが溢れていく。
ヴァンと二度と会えなくなる日が来るなんて思わなかった。
辛い記憶を思い出さないようにしていた。
けれどヴァンもコレットが指輪を渡した日の夜、国を出て会えなくなってしまったらしい。
「やはり悲しませてしまいましたね。あの時の僕は無力で弱くて……苦しむコレットを救うことはできませんでした」
「え……?」
「いきなり消えて申し訳ありません。ですがコレットを忘れたことは一度もありませんから」
ヴァンはそう言ってコレットの髪を優しくすいた。
「今回、僕は君の幸せを見届けられたら、それでよかったんです」
「わたくしの、幸せ……?」
「コレットの前に姿を現すつもりはなかった」
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