二章

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ヴァンの言葉の意味を理解することはできない。 けれど離れていてもコレットの幸せを考えてくれたことだけはわかる。 「それなのに……コレットは僕の前で傷だらけで倒れていたんですよ?信じられますか?」 ヴァンが持っていた硬そうなスプーンが怒りからか折れ曲がっていく。 笑顔は消えてピリピリと肌に感じるほどの怒りにコレットは驚いていた。 しかしこちらの表情の方が昔のヴァンの面影を感じるような気がした。 「……スプーン、が」 「ああ、申し訳ありません。メイメイ、代わりを」 「はい」 扉の向こうに控えていたのか、メイメイがすぐに代わりのスプーンを持って現れる。 ゴツゴツした指や手のひら、強くなった力、服の上からもわかる鍛え上がった肉体を見ればヴァンの変化が窺える。 ヴァンが再びスプーンとリゾットを持つが、無惨に曲がったスプーンを思い出して思わず体が強張ってしまう。 「怖がらせてすみません」 「ち、違うわ……!怖がったわけじゃ」 「いや、構いません。コレットのことになると我慢ができなくなります。僕もまだまだですね」 そう言ったヴァンは笑ったあとに、先ほどのようにスプーンでリゾットをすくい、コレットの口へ運んでいく。
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