二章

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「もうお腹いっぱいだから……」 「コレットは細くて小さいですから、いっぱい食べてください」 「……!」 どこかで聞いた台詞だと思った。 『はい、ヴァンは細くて小さいからいっぱい食べなくちゃ』 『もういらない。お腹いっぱいだ』 『ダメよ!逞しくなってわたくしを迎えにきてね』 『……わかった』 パーティーの時、誰も来ない建物の裏で山盛りのスイーツをこうしてヴァンに食べさせていたこと思い出していた。 「わたくしがヴァンに言っていた台詞……」 「はい、そうです」 「あの時のこと覚えているの?」 「えぇ、一度も忘れたことなどありませんよ」 目の前にいる青年が本当にヴァンだと思うと驚きと同時に、堪えきれないほどの嬉しさが込み上げてくる。 コレットが両手で目元を隠すようにしていると、ヴァンが心配そうにコレットの名前を呼ぶ。 「不愉快でしたか?」 「違うわ……また会えたことが嬉しいの」 「……!」 「二度とあなたには会えないと思っていたから」 コレットは手のひらを外してヴァンを見る。 青年の正体がヴァン安心感からホッとして笑みが溢れた。 ヴァンは皿を置いてコレットを思いきり抱きしめる。
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