二章

29/48
前へ
/234ページ
次へ
毎日、髪や肌を手入れしてもらい、花びらが浮かぶお湯を溜めた浴槽に入浴して体を温める。 ミリアクト伯爵家では侍女は皆、リリアーヌや両親の味方でコレットは自分のことはほとんど自分でやっていた。 それとは真逆で王族のような生活に戸惑うばかりだ。 (こんな贅沢、わたくしがしてもいいのかしら……) 献身的なメイメイやヴァンの甘やかしによって、コレットの顔色はよくなり、髪は艶やかで肌も潤い美しさが増しているような気がした。 鏡で見るたびに自分が自分でなくなっていく……そんな感覚に驚く日々が続く。 それと同時にこの穏やかな時間が、長くは続かないことも理解していた。 ヴァンは「コレットは何も気にしなくていい」「ずっとこうして暮らしませんか?」と言うけれど、ずっと甘えてばかりはいられない。 (わたくしはこんな風にしてもらう資格はないわ。だって今はヴァンに何も返せないもの) コレットはもう父の言葉通り、ミリアクト伯爵家から除籍されてしまったことだろう。 そうなればコレット自身に価値はない。 コレットと共にいたとしても伯爵家の恩恵を受けられない。 (あの様子なら、すぐに手続きをしたでしょう。もうわたくしはコレット・ミリアクトではなくなっているはずだわ)
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1151人が本棚に入れています
本棚に追加