二章

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この大きく立派な屋敷は、今はヴァンの所有物らしい。 出会った時の彼は、コレットよりも小さくて身なりを見ても男爵家か子爵家の令息にしか見えなかった。 しかし今は使用人の数や豪華な食事、装飾品を見てもそうでないことは明らかだ。 それにこの屋敷で働くすべての人たちの名前や会話の時に使っている言葉からシェイメイ帝国の人だとわかる。 (ヴァンはシェイメイ帝国の出身だったのかしら……だからパーティーでも肩身の狭い思いをしていたのかもしれないわ) 国から出たというのもシェイメイ帝国に帰ったという意味なのだろうか。 そう思うとこの状況も説明がつくような気がした。 ヴァンにそれとなくこれからの話をしようとしても何故か有耶無耶にされてしまう。 しかしコレットは次第に罪悪感を感じるようになる。 贅沢三昧な生活に申し訳なさが勝るのだ。 ヴァンは何故こんなにもコレットを甘やかすのかと問いかけたくなるくらいコレットを気遣ってくれる。 まるで愛されていると錯覚してしまうくらいにヴァンは優しい。 (……そんなわけないわ。ありえない) コレットは今日、ヴァンに働きたいという意思があることを話そうと思い、メイメイにヴァンの予定を問いかけるために口を開く。
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