二章

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次の日から屋敷の人たちがコレットを気遣ってか『ヴァン様』と言い直してくれるようになる。 しかし慣れていないのかメイメイもたまに間違えてしまう。 (わたくしが伯爵邸であんな人たちの言いなりになっている間にヴァンは努力して、こんな素晴らしい屋敷に住めるくらい立派になったんだわ) コレットは外のベンチでのんびりとしていた時だった。 『ヴァン様のあんな顔は今まで見たことがない。まるで別人じゃないか』 『あの方がヴァン様の……なのだろう』 『あんな風になってしまうくらいに彼女を……。まさに……だな』 シェイメイ帝国の言葉で、ところどころしか聞き取れなかったが、従者たちの会話を聞いたことがある。 コレットがいると気付いた従者たちは青ざめた顔で頭を下げて去って行ったが、もしかしたらいつまでも居座るコレットを咎めていたのかもしれない。 次第に悪い思考に傾いていき、その分も頑張って働こうと思っていた。 コレットが自らを落ちつかせるように紅茶に口をつけようとした時だった。 「──コレット!」 コレットの名前を呼びながら部屋の扉を叩く音。 返事をすると押し入るように部屋に入ってくるのは焦ったヴァンだった。 「メイメイから聞きましたよ!ここで働きたいと言ったそうじゃないですか!」 「えぇ、このままお世話になってばかりいられないもの。もちろんシェイメイ帝国の言葉もなるべく早く覚えて役に立つ……」 「どうしてそんなことを言うんですかっ!」 「え……?」
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