二章

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「だけど、わたくしは……理由もなくここにいることはできないわ」 コレットが俯いていると、ヴァンはこちらを覗き込んで説得させるように口を開く。 「理由などいりません。コレットが僕のそばにいてくれるだけで十分ですよ」 真剣な顔でこちらを見るヴァンの言葉は到底、納得できるものではなかった。 「……」 「ここにいることに不満があるのでしょうか?」 「不満なんてとんでもないわ。こんなに幸せな日々、はじめてだもの」 「コレット……」 コレットは誰かと食べる食事がこんな風に美味しいと感じたことはない。 メイメイたちと他愛のないお喋りをすることが毎日とても楽しくて、ヴァンと共に過ごす時間は以前と同じで幸せだと感じる。 今まで、コレットは完璧にしなければならなかった。 役に立たなければ自分に価値がないと教え込まれ、見えない鎖で縛られ続けていたコレットにとって、こんなにも幸せな時間が壊れてしまうことが怖くて仕方がないと感じる。 (できればここにいたい……贅沢だとわかっているけれど) 「わたくしもヴァンのそばにいたいわ」 「なら……!」 「もしここにいてもいいとヴァンが許可してくれるなら、わたくしもヴァンのためにがんばって働……」
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