3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
それは突如起きた。
私がコンタクトを初めてつけていった時の学校にて。
「おーあんた、コンタクトにしたんだ」
少し枯れ気味の低い声。それでいて嫌気も何もささない。
森川結月だ。自称陰キャのアニメ女子。
クラス全員と話せるので陰キャとは程遠い存在ではないかと思っているのだが。
一部の男子から「お姐ちゃん」と呼ばれている。姉御肌なこともあってよく頼れる存在だ。
ちなみに私は姉貴と呼ばせてもらっている。
「そうそう、コンタクトのほうが度もあってたし…」
「いーじゃん、元がいいからなんでも似合うな」
彼女はぼそっと呟く。国語の準備をしながら席に座った。
彼女の席は私の左後ろなので後ろを向いていれば話すことができる。
こんなにもナチュラルに人を褒める人っているんだな、と驚きながらも返事を返す。
「森川さんはお世辞がうまいね〜」
「それほどでも」
と彼女は鼻で笑う。
「少しは私をたててくれーww」
「いやいや…嘘はつけない性分でね」
そうですかぁ…っと小さく呟いた。
「嘘つくなよ〜お姐ちゃん、ちっちゃい頃は嘘つきまくってただろ?w」
森川の後ろから声が聞こえた。
「てめぇは黙ってろやw悟」
森川の後ろの席にいるのは西島悟。
自衛隊ヲタクで森川と幼馴染だ。
森川と西島、この二人が話すとテンポが良く漫才のようなのでどんなにくだらない話でも面白く聞けてしまう。
「いや〜武井。お姐ちゃんが言うことはまともにうけんなよ?w嘘ばっかついてっから」
「それを聞くと私のコンタクトは似合っていないということになるんですけれどもその件に関してはどうお考えで?w」
私は勝手に口から言葉が滑り出た。
「え!?いやそれは…その……」
狙いすましたかのように森川は笑った。
「わ〜悟が武井さんをいじめた〜〜w西島3尉は直ちに謝るように」
「さーいぇーっさーー」
ふざけたように西島は敬礼をする。
彼はニコニコ笑いながら
「武井のコンタクトはすごく似合っていると思います」
と言う。まるで業務連絡のようなその答えに思わず笑いが込み上げた。
「くっくっく……w」
ところでさ、と西島達が話し始めたので私は前を向いた。
時々聞こえてくるテンポの良い会話がどことなく面白い。
「武井さん…」
声がして横を向いた。さっきまで寝ていたはずの佐々木が頬を机に付けたままこちらを向いていた。
彼は私の方を見ると言った。
「武井さん、コンタクト、か…かわいいと思う」
少し言い淀んだ。
そして状態を起こしながらボソリと呟いた。私が耳を澄ませてもぎりぎり聞こえないくらいの声で。
「でもメガネにしてもらわないと……可愛くて困る」
いやS氏?!wあなた女たらしかなにかなのかっ?
その次の日から私は彼の要望通りメガネを掛けてくることにした。
そうそう、西島の紹介でいい忘れていたことが一つ。
「お姐ちゃん〜…ぜってーオメェのほうが元がいいだろ…」
「え?なんて」
「いや………なんでも」
テンポの良い会話から聞こえていた一つの会話。
西島悟は幼馴染に恋をするというベタなタイプでありながら、重度のヘタレであるのであった。
続く(?)
最初のコメントを投稿しよう!