バトルロイヤル

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「おめでとうございます。それでは、お二人には賞品がありますので、会場の中央にお願いします」  会場のアナウンスに従い、私達は会場の中央へと歩いていく。  そこには、いつの間にか一人の女性が立っていた。彼女は笑みを浮かべ、二つのガラスケース見せる。中には青く光る不気味な物体があった。 「ガラスケースを開けて、青い物体に触れてください」  彼女は微笑みを浮かべ、私達に説明を始めた。  私達は彼女の説明に従い、ガラスケースを開け、青い物体に手を触れる。  電気ショックを受けたような衝撃が、右腕から身体全体に伝わってくる。  身体全体に青いプラズマが何本も走り出し、私の身体は青い炎に包まれ、上体を反り返して、悲鳴を上げてしまう。体中を駆け巡る激痛に耐え切れず、両脚がガクガクと震え出す。  喘ぎ声を上げながら、両脚が少しずつ折れていき、両膝で何とか立ってはいたが、身体を駆け巡る衝撃は更に激しくなっていき、上体を反らして絶叫をしてしまう。  喘ぎ声を上げ続けながら、身体は四つん這いになり、ビクビクと震える全身を抑えながら、意識だけは失わないように必死に耐え続けた。  やがて、青いプラズマは収まり出し、青い炎も消えていくと言うか、私の身体の中に吸い込まれていくような感じだった。  バズソイヤーも四つん這いになり、両肩を震わせて、荒い息使いをしている。この衝撃と激痛だ。当然だろう。 「一体、何をしたんですか。納得のいく説明をお願い出来ます」  私は四つん這いの状態ではあったが、彼女を睨み、説明を求める。 「安心して下さい。これが今回の大会の賞品です。貴方達にとって、素晴らしい物に間違いはありませんよ」 「これが賞品?私達はかなりの苦痛を味わったわ。事の次第によっては容赦しないわよ」  私は未だに震える身体を抑えて、ゆっくりと立ち上がり、彼女に詰め寄る。 「落ち着いて下さい。今から説明します」  彼女は落ち着いた表情で、淡々と話を始めた。彼女の話によると、彼女は生物学者で、名前はホボカト。長年続けた研究の成果が今回の賞品だと言うのだ。その研究の成果とは、寄生生命体と言っていた。私に難しい理屈は分からないが、宿主に対ししては全く無害で、永遠の命とスーパーパワーを授けてくれると言っていた。 「永遠の命とかスーパーパワーとは」  バズソイヤーが問い出す。 「永遠の命とは、その通りの意味です。貴方達は不老不死となりました。スーパーパワーも文字通りです。貴方達の身体が信じられないくらいパワーアップをしました。特に戦闘の時に稼働しますので、貴方達にとっては非常に有効な生命体が寄生したことになります」 「俺達は不死身になったわけか。それこそ、やりたい放題だな」 「そうね。不死身の身体で更なるパワーアップ。素晴らしい賞品ね」 「待ちなさい。完全に不死身になった訳ではありません。他の者に殺されてしまえば、それで終わりです。寄生した生命体は宿主を離れ、近くに人がいれば寄生をしますが、いなければ、消滅してしまいます」 「どう言う事だ、不死身じゃないのか」  再びバズソイヤーが問い出す。 「不老不死です。何事もなければと言う事です。それと、スーパーパワーも限界があります。永遠にフル稼働は出来ません。生命体ですからね。休息をとれば復旧しますよ。それと身体の修復能力も異常なほどに高まっていますから、ご安心ください。休息をとるだけで、身体は修復をされます。ただし、完全ではないことを頭に入れておいて下さい」 「完全じゃない。どう言う事?」  今度は私が聞き返す。 「研究をかなり重ねたのですが、九十九.九パーセントまでは修復出来るのですが、完全には至りませんでした。酷いダメージを受ければ、身体は少しずつ崩壊していきますので、そのダメージの蓄積によって身体が崩壊してしまえば、生命体は宿主を離れるので、死を迎えるということになります」 「結局、不老不死じゃないってことじゃない」 「いえ、何事もなければ、不老不死です。意識を失うようなダメージを受け続けないことです。ただ、そんなダメージを受け続けるような人生を送っても、三千年は生きられますよ」  三千年……。気が遠くなるような数字だ。それまでに、今日の話なんて忘れてしまいそうだ。 「そう。分かったわ。本当に素晴らしい賞品だわ。ありがとう」 「ところで、何故、俺達にこんな素晴らしい物を」  当然の質問だ。普通、このような物は、正義とか言うくだらないもののために使うだろう。  ホボカトの話によるとこうだ。  人体に対して無害な生命体を寄生させることによって、病気を治癒させる研究を続け、ついにどんな病気に対しても治癒が可能な寄生生命体を創り出すことに成功をしたが、認められなかったとのことだ。認められないばかりか、研究内容をすり替えられ、追放されたと言っていた。細かい内容は紆余曲折もあって、良くは分からなかったが、とにかく酷い目に遭わされたから復讐をしたいと言う事だ。  悪党達を強力にすることによって、自分の研究内容がどれだけ有効なもので、素晴らしいものであったかを復讐を兼ねて実証したいとのことだ。 「ところで、この賞品を手にしたのは俺達だけなのか」 「今のところはね。この生命体を創るのにはかなりの時間がかかるから、次は三年後くらいかしら」 「そう。私達だけで十分だと思わない」 「俺達だけで十分さ」  バズソイヤーは私の問いかけに同意をした。  私達は当然、ホボカト、大会の主催者と関係者も殺害し、この会場を後にした。
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