決断

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 私はエリーナ。今、監獄の中にいる。警察官を十人も殺せば当然の結果だよね。貧困層の出身だから間違いなく死刑かな。あの時、私は自分自身をコントロールするこが出来なかった……。  私は貧困層で生まれた。父は私が生まれる前に死んだ。盗みを働いて、逃走中に警察官に射殺されたと、幼いころに母から聞いた。警察は貧困層には容赦しないのだ。母は病弱で働くことが出来なかったから、私が働いて何とかしていた。  子供の頃は盗みが主な稼ぎだった。まともな仕事なんかなかったからね。  それと、格闘技も自己流ではあったけど、必死に練習をしていた。試合会場を覗いては、見よう見まねで技の特訓を重ねた。地下格闘技でトップクラスになれば、ファイトマネーで何とか生活をしていける。母にも少しはまともな暮らしをさせる事が出来る。そう思ったからだ。  私は地下格闘技大会に出場出来る年令になったら、率先して出場した。勝つためなら手段は選ばなかった。最も、富裕層の格闘技と違い、こっちの格闘技は何でもありだったからね。反則と言う概念は無かったかもね。  私は盗みを続けながら、格闘技の特訓と試合を重ね、ついにトップクラスに上り詰めた。  しかし、ファイトマネーは思ったより入ってこない。興行主がピンはねをしていたからだ。だからと言って、興行主と喧嘩をする訳にはいかない。私は僅かなファイトマネーで納得をするしかなかったのだ。  結局、私は格闘家だけでは、病気の母を養うことが出来ず、盗みも続けていた。  盗みは大体、私一人でやっていたが、時には仲間と一緒にやることもあった。富裕層を狙っていたので、警備が厳重な時は仲間と良くやっていた。  私は一人で今日は何処で盗みをやるか、考えながら貧民街の通路を歩いていた。  そこへ、いつも盗みをやっている仲間の少女が、私の所に駆け寄ってきた。 「エリーナ!お願い助けて!追われているの」  私は前を見据える。紺色のスーツに黒い防護服、手には警棒を持っている。三人の警官がこっちに向かって走ってくる。彼女を見ると、顔は痣だらけのうえ血まみれ。衣服は破かれていて、体中が傷だらけになっていた。 「やりやがったな!」  私は大声を上げ、一人の警官に飛びかかり、馬乗りになって顔面に左右のパンチの連打を叩き込んだ。警棒を振りかざしてくる警官をかわすと同時に、腹に左の横蹴りを入れ、もう一人の警官の腹にワン・ツーを叩き込み、ふら付かせてから、顔面に飛び蹴りを叩き込んだ!  それから、倒れ込んだ警官から警棒を奪い、三人の警官の頭を嫌って言うほど殴り続けた。飛び散る血飛沫を顧みず。  更に、四人の警官が警棒を振りかざしてかかってくる。  一人の警官の警棒を受け流し、腹を警棒で思いっきり振り抜き、もう一人の警官の警棒の一撃を受け流し、腹に蹴りを叩き込んでから、警棒を後頭部に叩き込んだ!  別の警官が警棒を打ち下ろしてくる。私はその一撃を警棒で受け、前蹴りでその警官を弾き飛ばし、馬乗りになって顔面を警棒で何度か殴り、もう一人の警官は逃げ出そうとしていたので、後頭部を思いっきり警棒で殴った。  それからは、倒れ込んだ警官を一人ずつ、警棒で殴りまくった。  私は自分を深紅に染め上げ、警官達を容赦なく警棒で殴りまくっていた。  今度は三人の警官が私に向かって銃口を向けている。  終わった……。父と同じ人生か……。ごめんね……お母さん……私……これで終わる……。  私は頭の中が真っ白になり、ただ、右腕を伸ばし右手を広げた……。何故そうしたのかは分からない。ただ、必死だった。死にたくない。それだけだった。  その時、右手に体内の力の全てが集まるのを感じ、右腕がとても熱くなり、右の手の平から、眩し過ぎる光が放たれ、三人の警官を消し飛ばした。  自分に何が起こったのか分からなかった。ただ、茫然と立ち竦んでいる所を私は逮捕された……。
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