決断

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決断

 惑星エリーナでは幹部会議が開かれていた。会議の内容は連邦に出す人の選出だ。連邦とは、各惑星から選出された人達で構成される部隊のようなもので、宇宙の平和維持を目的としている。  惑星エリーナの気候は年間を通して温暖ではあるが、他の惑星と比べると重力が重く、他の惑星からの侵略はまずない。他の惑星の宇宙船では、着陸は不可能だし、着陸できたとしても、惑星エリーナに着地した時点で、身体は重力に負けて死んでしまうだろう。  そういう事で、他の惑星との戦争がない平和な惑星にとって、軍隊が整備されている訳ではなく、治安維持のための警察くらいしかないので、連邦に出す人の選出は難航していた。  幹部の中では富裕層からの選出については反対意見が多く、前年度の格闘技大会のチャンピオンを出すことについても反論が出た。 「貧困層の人で良いんじゃないのか。無事に帰って来たら、富裕層で生活を出来るようにしてやるとか」  一人の幹部がそんな話を持ち出した。 「貧困層には地下格闘技があるだろう。そこのチャンピオンならどうだ。恐らく富裕層のチャンピオンより数段も強いだろう。返って連邦にとっては戦力になるんじゃないのか」 「力だけの話ならそうなる。けど、人格的なところでどうなのだ。問題だらけの人を送るのもどうかと思うが」 「連邦に送る前に少し教育を施せば何とかなるだろう。今から当たったらどうだ」 「それで良いと言う事でしたら……」  一人の幹部が上目使いで意見を言いだす。 「当てがあるのか」 「貧困層の地下格闘技大会で常にトップクラスにいた少女がいます。何度かチャンピオンにもなっています」 「少女か……。構わんその少女を当たれ。帰還後は、富裕層に上げてやれば、受けるんじゃないのか」 「一筋縄ではいかないと思いますよ」 「何か問題でもあるのか。教育をして多少は何とかならんのか」 「現在、服役中でして……」 「何かやらかしたのか。帰還後は無罪放免にしてやれ」 「宜しいのですか?警察官を十人も殺害した、死刑囚ですが」  会場は一気に静まり返ったが、結局、その死刑が決まった少女を連邦に選出することになった。帰還後は富裕層での暮らし、無罪放免、他にその少女が条件をだしてきたら、それも受けると言う、破格な契約を交わすことも条件に入れて。 「ところで、その少女の名前は?」 「エリーナです」 「惑星の名前がそのまま名前になるとはな。貧困層らしいな」
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