139人が本棚に入れています
本棚に追加
贅沢したいと思っているわけではない。ただ、一緒に過ごしたい。それだけだ。
神様、そのささやかな幸せであっても、私は掴んでいてはいけませんか...?
「もう、いいから、さっさと死ねっ!」
「ミユ、やめて!」
閃光の走るスタンガンを喉元に突きつけられ、赤黒く変色したナイフが頭上に翳される。マリアは反射的に目を閉じ、視界からミユを追い出した。
カーン、という金属音が鳴り響いた。
そして、静寂が舞い戻った。
おそるおそる、マリアは瞳を開けた。
「えっ...?優星...?」
ナイフを握っていた手の平を痛そうに丸めていたミユの背後に、シルバーのスーツを着た優星がいた。
見れば、マリアの足元に、ミユの握っていたナイフと、非常階段の扉の前に落ちていたライターが転がっている。
「コイツがお前の男かよ!ってか、桜井優星じゃん!お前、どんだけーっ!」
最後の悪あがきをする害虫かのように、高くて耳につく嫌な声で、ミユは叫んだ。
「邪魔すんじゃねぇよ!お前も一緒にまとめてあの世に送ってやるぞ!」
最初のコメントを投稿しよう!