序章

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序章

目が覚めると、見知らぬ寝台の上に自分がいるとマリアは悟った。 「どこ?私は何をしているの?」 起き上がって周囲を見回した。そんなささいな行為をしただけで、頭がひどく痛む。 「良かった。マリア、気がついたんだね」 マリアの左手に、グレーのストライプスーツを着込んだ彼がいた。 マリア。今、彼はマリアと自分を呼んだか? 「いや、実際はマリエなのかな?」 どういうことなのか。自分は今、どんな姿でここにいるのか。 マリアは部屋に鏡がないか探した。それはすぐに見つかった。右手に大きな窓があったのだ。 青空の下、燦々と降り注ぐ陽光に照らされる東京都心のビル群が臨めるその窓に、血色の悪い自分の顔が映る。 紛れもなく、マリア、だ。 なぜだ。なぜ、自分はこの姿のまま、彼と会っているのか。 そして彼はなぜ、自分をマリアと呼んだのか。 いずれにしても、まずい。かなり...。
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