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おそらく世界で最も手に入れることが難しい女、それがマリアであり、そのマリアを優星は手中に収めようとしている。
そこに幾多の困難が立ちはだかろうと、突破してみせようと、優星は心に決めている。
それにしても遅い。また何かのトラップにはまっているのではないだろうか。
優星は貴重品すべてをシルバーのスーツの上着のポケットにしまい、様子を見るために部屋を出た。廊下はシンと静まり返っており、人っ子一人いなかった。
不審に思い、優星は廊下を進み、マリアの楽屋がある方へと向かった。右手は楽屋だ。様々な芸能人の名前が印字された札がかけられている。左手は壁だ。その壁の一角に、自販機が置かれ、さらにその先には非常階段へつながる扉がある。
不意に優星はここが気になった。
扉に近づこうとした時、何かを踏んだ感触がした。ふと足元を見ると、銀色に光る小物があった。ライターだった。
この先は喫煙所と化している場所か。ノンスモーカーである優星には無縁だが、なんとなく胸騒ぎがする。優星はドアノブを回した。
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