137人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヤバい。どうしよう...」
マリアは青ざめた。本日何回目であろうか。
「仕方ない。マリア、最終手段といこう。貴重品は所持しているね?」
肩に提げたゴールドのポシェットをマリアは優星に見せた。
「もちろん」
「よし、行こう」
優星はマリアの手を引っ張り、ドアノブを回し、廊下へと戻った。
「走るよ。僕は速いけど、大丈夫かな?」
「大丈夫。私もわりと足には自信あるから」
「そう?じゃあ、行くよ」
二人は疾走した。
道すがらで数人とすれ違ったが、皆、そのスピードに思わず目を丸くしていた。
走りながら、マリアはまだ衣装のままであったことを思い出した。ちょうど『La reine』の楽屋前に差し掛かったためでもある。
それとなくマリアは楽屋に目を遣った。すると部屋の前に、あるメンバーが立っていた。
ルナだ。
すれ違いざまに、マリアはルナと目が合った。
底意地の悪そうな目つきで、ルナはほくそ笑んでいた。
そうか。そういうことだったのか。
でも、もうどうでもいい。
さようなら、「La reine」。私の黒歴史を刻んだ、栄光のグループよ...。
最初のコメントを投稿しよう!