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発される不安そうな色を感知したのだろう。優星が励ますようにマリアに言った。
「歌って踊れる。ブロードウェイで充分通用するだろうし、女優として映画に起用してもらえる可能性だってある」
「でも、私、女優としての実績はほとんどないし...」
「ひと月もの間、僕の目を騙し続けていたじゃないか。僕だけじゃない。あの店の客、展示会の出席者、僕の会社の社員、徳島。こんなにたくさんの人の目を欺いた。マリアは立派に一流の女優だよ」
そんな風に優星が思ってくれるのは嬉しい。だが、最大の関門が一つ、ある。
「だけど、私、英語がわからないよ...」
「できるようになるよ。マリアは賢いし、適応能力が高い。先生をつけてレッスンをすれば、すぐに覚えるだろうね」
「大丈夫かな?私、あんまり頭、良くないんだよ」
「僕だって大して勉強は得意じゃなかった。でも、覚えられた。だから、マリアもできるよ、必ず」
尚もマリアは不安げにしていたのだろう。優星はマリアの手を握って、続けた。
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