1.幻想の三女

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 割りと領地が近く、そして同じ伯爵位ということと、あと年齢も近かったことが後押しをし何度か互いの領地で遊んだ幼少期が浮かぶ。  ――可愛らしい華冠を作るロベルトを寝っ転がりながら眺めた私(その後被せてくれた)  ――一生懸命馬の世話をするロベルトをチラ見しながらおやつを口いっぱいに頬張っていた私(その後馬に乗せてくれた)  ――木陰で読書するロベルトの膝に涎を大量に垂らしながら昼寝した私(その後拭いてくれた) “今思えばクレームが入らなかったことが奇跡すぎる”  過去の自分にゾッとするか、そのロベルトから婚約申込み。  クレームではなく婚約の申込み……!  正直これはチャンスだ。  幼い頃とはいえ会ったことがある相手、姉や兄とは違う、美人の噂もただの噂だとロベルトは知っているはず。  ならば今更ガッカリもしないだろう。  それにあんな態度だった幼少期のぐうたらな私も知っているのに婚約の申込みを送ってくれたのだ。 “会ったのは幼い頃の数回だから……”   「つまり私の願いが叶う可能性を見たわ!」 「願い、ですか?」 「そうよ、私にガッカリしない相手とサクッとお飾り婚よ!」
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