1.幻想の三女

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1.幻想の三女

「リネア様、婚約の申込書がまた届いております」 「あー、そこらへん置いといてぇ……気が向いたら見るから……」 「五日前の申込書もありますが」 「じゃあそれは暖炉へ……」 「中を! いいえ、せめて相手様のお名前だけでもご確認くださいッ!」  専属侍女のクラーラに叱られ「へぇい」となんとも気の抜けた返事をした私は、それでもやはり見る気になれない婚約申込書から目を反らしマカロンへと再び手を伸ばした。  ……の、だが。   「ご確認いただくまでおやつは禁止です」 「えぇっ!?」  あと少しでマカロン、というタイミングでお菓子を取り上げられ思わず声を上げる。 「もう三十通も溜まってるんですよ!? どんどん大変になるのはリネア様ですからね!」 「えー……。それは、まぁそうなんだけど」  確かに三十通もの返事を一気に書こうと思うとなかなかの重労働で、クラーラの言っていることは正しい。確かに正しい。けど。 “どうせ会ってもガッカリされるだけなのよねぇ”    私ははぁ、と大きくため息を吐いた。    凛と咲く大輪の薔薇と称される、誰よりも麗しい銀髪の髪をした姉が嫁いだ翌年。
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