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第4話
「うわ……やっぱ話題になるよなぁ」
夜——
いつものように動画サイトを見ていたんだが。
モールの出来事がばっちりとアップされていた。
他の建物から映し出された動画。
望遠モードで撮影したのか、画質は荒いな。
だが、羽ばたくドラゴンとそれを貫く黒い雷光。
それは言い逃れできないくらいに、しっかりと映し出されていた。
「コメ欄も荒れてるなぁ……」
英語、ドイツ語、フランス語で好意的なコメもちらほらとあるが。
「ふーん、あとは酷いコメばかりだな」
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くだらないフェイク
安いCG
騙すならもっと上手く騙せ
糞動画wwww
ドラゴンなんて存在しないだろw
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概ね煽りのコメで溢れかえっている。
カチカチっとマウスをクリックし、画面をスクロールしていく。
UMA、宇宙人の先兵、政府の実験体かと陰謀論まで出ている。
【ドラゴンどこ行った?】
ふぅ、と俺はため息を吐き、棚の上のアクリルケースに目を向けた。
ドラゴン用に購入した爬虫類飼育セット。
中の樹木にしがみつく姿はトカゲそのものだ。
「……ドラゴンは誰が召喚したんだろうな」
「さあな……誰の仕業だろうが、あの召喚は失敗だ」
ベッドで寝ながらタブレットをする魔王は素っ気なく答えた。
「……失敗?」
「うむ。本来は召喚獣と戦って服従させる必要があるのだが——」
「——そうか。それができなかったから失敗ってことか」
『そうだ』と魔王は頷く。
「ドラゴンを召喚した奴の目的ってなんだろうな……?」
「どーでもいいことだ……相馬も早く忘れろ」
「まあ、そうだよな〜」
召喚した人物の目的や正体なんて、探しようがない。
見つけたからって、対処しよもないしな。
「ところでな、相馬……ちょっといいか?」
「どうしたんだ……って、なんだそれ!?」
俺が振り返ると、彼女はベッドを降りて部屋の隅に立っていた。
「——どうだ、この制服、似合っておるか……?」
彼女は仁王立ちをして、ドヤ顔をしている。
黒のブレザーに、白のスカートにピンクのネクタイ。
それは私立聖王樹学院指定の制服なんだが——
「な……なんで俺が通う高校の……しかも女子の制服を着てるんだよ!?」
「ぬ? この春から我が輩も通うのだが、マリアから聞いておらぬのか?」
「……うん、聞いてない」
そ……そう言う大事なことは先に言えよ、母さん!!
突然聞かされる息子のことも考えろ!?
「それよりも——」魔王はくるりと回ってみせた。
「——どうだ、似合っているか?」
ふわっ、と捲れたスカートから太ももが見える。
ふおおおおおおおお! 今、パンツがチラッと見えたんだけどおおお!?
「そそそそ、それっスカート短すぎだろ!!」
彼女は裾を摘み上げ、
「そうか? これぐらいが普通だと佳奈が言っておったぞ」
不思議そうな表情を浮かべている。
ぬぅ、妹め余計なことを。
ギャルファッションを、魔王に勧めるんじゃない。
「はぁ……あのな、他の連中が覗いたりしたらどーすんだよ」
「ふむ。なるほどな」彼女は呟くと——
「では、スカートが短いから嫌だ、と言ってくれ」
「は……はああああ!? なななな、なんで俺がおまえにそんなことを——!?」
「——他の男に見られたくないのだろう?」
彼女は勝ち誇ったように微笑んでいる。
み、見透かされてるぞ……!
それを知ってもなお、魔王は「ほら早く言え」と煽ってくる。
「べ、別にそうは言ってない。俺は一般的な常識をだな——」
「なかなか強情だな、相馬は」
魔王は「よいしょっと」と呟き、俺の膝に跨った。
彼女が俺の膝上に乗り、二人を乗せた椅子がギシギシと軋む。
なななな、なんだこの状況ーーっ!?
え、なんで魔王が俺の膝に乗ってんの!!
腕まで組んで優越感たっぷりの顔で俺を見下ろしているし!
「さあ、嫌だと我が輩に言ってみるがよい」
挑発するような目をし、彼女はぎゅーっと体を密着させてくる。
や……やめろおおお!
魔王の柔らかい胸が当たってるぅぅう!
いや待て……これはただの脂肪、そう脂肪だ!
脂肪が当たったくらいで俺の鋼の平常心は……って、冷静でいられる訳ないだろ!!
「どうしたのだ、相馬。汗がすごいことになっているが……?」
「ナナナナ、ナンデモナイヨ。別ニ正常ダヨ」
「ふむ……そうなのか?」
彼女はきょとんとし、不思議そうに首を傾げた。
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