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部屋に戻ってドアに鍵を掛けた後、ふらつきながらベッドの上に倒れ込む。
まるで頭の中が掻き回されているかのように、混乱し続けていた。
母の話からも、中学二年の時にクラスでいじめられていた中條佐奈枝を私が庇おうとしたのは事実のようだ。それはこの前、実際に彼女から聞いた話の内容とも一致する。
だがその後、私自身もクラスメイトから無視されて不登校になったというのは、初めて知る話だった。
「私は……どうして」
薄暗い部屋の中、天井に向かって伸ばした自分の手をじっと見つめる。
その当時の私は、学校にも行かずにこの部屋に閉じ籠もって……何を考えていたのだろうか。おそらくその出来事が、今の記憶の消失とも関係している気がする。
傍らに放り出していたアルバムに目を移すと、最後に写ったクラスの集合写真のページが開かれたままになっていた。
何気なくその中二の時のクラスメイトたちの顔を眺めていて、ふと視線が止まる。
「こ、れ……」
慌ててベッドから身を起こし、アルバムを手に取る。
さっきは自分と中條佐奈枝の存在にしか注目していなかったので気付かなかったが、その集合写真には真宙の姿もあった。
「真、宙……」
確かに真宙が別の高校に通うようになるまで、私たちはずっと同じ学校に通っていた。今はその頃の記憶が失われているだけで、私と真宙が中学の時に同じクラスだったとしても何もおかしくはない。
「じゃあ真宙と中條佐奈枝は……中学の時から知り合いだったの?」
これまで共通点の無かった二人の間に見つかった接点。だがそこには、明らかな違和感があった。
同じクラスであれば、真宙は中條佐奈枝がいじめられていたことも、私がクラスで孤立していたことも知っていたはずだ。ではその時の真宙は、不登校にまでなった私に対して何もしなかったのだろうか。私のことを絶対に守ると言った彼の今の行動とは、明らかに違いすぎる気がした。
「どうして、真宙は……」
何か大事なことを見落としている気がして、私は集合写真に指を沿わせながらクラスメイトの顔を一人づつ確認していく。
その時、写真の端に居る私と中條佐奈枝とは離れた所に映った二人のクラスメイトを見て、指が止まる。
「そん……な」
思わず言葉を失う。
そこに映っていたのは……凛と朱音だった。
クラス写真の中央に、凛と朱音は並んで立っていた。今よりも少し幼くは見えるものの、二人の姿を見間違えるはずがなかった。
食い入るように何度も二人の顔を確認した後、茫然と呟く。
「凛と朱音も……私と同じ中学に」
信じられなかった。私の記憶では、凛と朱音は二人とも別の中学校だったはずだ。だから高校の入学式で初めて顔を合わた時に、彼女たちは話し掛けてきたのだ。
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