真白な花に導いて

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内臓が浮き上がる感覚がして、それからすぐに機体は分厚い雲に覆われる。 どんなに目をこらしても上も下も、右も左もわからない。 変わらない景色に退屈して、半時間程度うたたねすると機体は空中でぴたりと止まった。 アナウンスはないが、乗客は勝手知ったる顔で降りていく。ぞろぞろと足音が横を通る。 これでは飛行機というよりUFOみたい、と泉は少し可笑しくなる。 乗ったときと同じ階段を今度は降りて、キャビンアテンダントさんに促された方角へ一歩進むと、途端に他の乗客の気配はしなくなった。 泉の前には石畳の小道が現れ、雨に濡れたように黒く光っていた。 電柱はなく、道の両脇にはぽつぽつと店が立ち並ぶ。 雨上がりの朝の空気だ。 爽やかで涼しくて、降り止んだ雨粒がまだ数滴風に舞っている。 泉の手にはいつの間にかリードが握られて、その先からはたしかに愛犬の歩くリズムが届いてきた。 ちょっとガニマタで、自分の行きたい方にずんずん進んでいく。 この歩き方をするのは、泉が勝手を知る庭の中だけなのに、夢の中ではいつもこうだ。
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