番外編・その2

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 末妹ミライは持ってきた羽衣をまとい、墓石の前で舞い始めた。  彼女はまだ齢12、両親が恋しくて、甘えたくて仕方ない。兄や姉のように割り切った会話ができず、ずっと涙を堪えていた。しかし舞い始めると、きょうだいへのちょっとした優越感で、己の不遇も納得いくような気がした。  その時、ふと舞い止めた。そしてすぐそこの空を見つめる。 「父上、母上。いるんだろそこに。俺、なんとなく分かるんだ。ほんとにもう一緒にいるんだな」  ミライの目には、若く元気なふたりが幸せそうに笑っている。だからか、涙がわっと溢れだした。 「これは寂しいからじゃないよ。嬉しいから泣けてくるんだ」  親を亡くして嬉しいと言うのもおかしな話だが、どういう言葉で言い表せばいいのか分からなかった。 「たとえふたりともいなくなっても、でも、いるから」  彼女は空に向かって届くように、笑顔で言葉を投げかける。 「父上と母上の命を繋ぐ、自分が嬉しいんだ。俺自身が同じ命だから、寂しくないよ」  本当はやっぱり寂しいけれど――――。  彼女が強くあろうと奮い立つ心で見ているためか、父と母の顔は安心した様子だ。彼らは一度見合って、ふたりで高い夜空へと駆けていった。  ふたりとも楽しそうで嬉しそうで、何よりも自由で、そんな魂が永遠に(そら)を漂い続けるのだと、ミライはその(はなむけ)に心地よく舞った。  そして彼女にはまた明日がやってくる。明後日も明々後日も、日々の暮らしを繰り返し、命を未来へと繋げていくのだった。             ─完─ · · • • • ✤ • • • · ·· · • • • ✤ • • • · ·· · • • • ✤ • • • · これで本当に完結です。最後までお付き合いくださいまして、多大に感謝申し上げます。 ここに出てきた「長男」(名前は出てきていませんがスバルと言います!)は13章ラストで出てきた「トバリ似の青年」です。トバリ(伯父ちゃん)というかホタル(お祖父ちゃん)似なんですね。隔世遺伝したのかー。 これで大体のネタは回収したと思います!(作者の自己満足。苦笑) 感想・レビュー大歓迎でございます…(本作、完結までお読みいただけること自体非常に稀ですので、忌憚のないご意見・ご感想がいただけたら……と切実な思いでおります。゚(゚´ㅅ`゚)゚。 今後、登場人物設定まとめ、執筆記録などを スター特典で投稿しようかと考えております。 その際にはぜひ、お立ち寄りいただけましたら幸いです。 (5部のうちどこにスター特典を付けるか未定ですので、もし本棚登録いただけていましたらそのままで💦または作者フォローいただけましたら、投稿時につぶやきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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