28人が本棚に入れています
本棚に追加
夢での再会
それからユウナギは朝から晩まで祈りを捧げ続けている。御神体の前で一心不乱に舞ってもみた。それでも先代女王のように、神の依巫にはなれなかった。
彼女は毎晩、失意の中、床に就く。そして毎晩夢にうなされる。この日もまた戦の夢であった。人が次々と殺され、自分も恐怖に耐えかね逃げ出すが、すぐに敵兵に捕らえられ刃を向けられる。もうだめだと思った瞬間、彼女の立っていた地は抜け、地底に吸い込まれていく感覚が――――。
気付いたらそこは、暖かい花畑。
「え? ……あの世?」
そこでユウナギの目先に見えたのは懐かしい、無邪気なコツバメの姿だった。このたびも花冠を作っている。
「コツバメ……!」
ユウナギはとても嬉しかった。久しぶりに友に会えたのだ。しかし、すぐに気付くことになる。
「私を迎えに来たの?」
たった今、自分が生きているのか死んでいるのか分からない。どういう時点にいるのかも。ここはもうあの世なのだろうか。
――――だからコツバメがいる? これは戦の終わった後? だとしたらみんなは? 死んで離れ離れになってしまったの?
「ずいぶん混乱しておるようじゃな」
それでもコツバメがいる。心強く思う。
「おぬしは死んでおらぬぞ。私がおぬしの夢枕に、立っておるのじゃ」
「夢枕?」
夢だったのか……と一度は安心するが、何も終わってはいない。戦の夢はこれから起こる現実。再び憂鬱に沈む。
「久々におぬしと遊びとうなってな。……と、言いたいところじゃが。おぬしは今それどころではないようじゃの」
「……そうね、今は楽しく遊べる自信がないわ」
コツバメは暗い表情のユウナギに対し、明るく努めようとしている。いや、彼女の元の性分か。
「実を言うとのう、こたび私は、おぬしの手助けにきたのじゃ」
「手助け?」
「おぬしの連れ合いとの約束でな」
「連れ合い??」
「おぬしのために、一肌もニ肌も脱ぐぞ! 来い来い」
コツバメはユウナギの手を取った。その手は温かく、ユウナギは安心して身を任せた。
最初のコメントを投稿しよう!