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のりうつる
夢が暗転した。目が慣れると、そこは屋内だろうか。周りに立派な調度品の置かれる、どうやら寝床のようだ。人がふたり見える。
ぼんやりした視界がだんだんと明瞭になり、目の前にいるふたりの人物が裸形であることにユウナギは気付いた。
「!!」
寝床のふたりは下半身に掛物をかぶっているが、ユウナギにも大体の状況は掴めた。
「この場面は……。この雰囲気は……」
奥の女性が横たわり目を閉じている。隣の男性は上半身を起こし何か読み物をしている。そして顔立ちすらはっきりと見えてきて、それが誰であるかを知った。
「アヅミ!」
「安心せい、眠っておるだけじゃ」
「この男は……大王」
そちらもまったく見覚えのある顔だった。
こちらはみえているが向こうから自分たちが見える様子もない。そう、これは夢の中であった。
「話してみとうないか?」
「話す?」
「おお。あれらのどちらかと。おぬしと私の神の力を合わせれば可能じゃ」
「どういうこと!?」
コツバメは強気な様子で提案する。ふたりの力を合わせて片方に乗り移り、片方と言葉を交わしてみるのはどうかと。
「乗り移るって……」
「私は今現在、霊じゃ。私自身なら難しいことではないが、おぬしが生霊となって乗り移るには、私の力が必要だということじゃな。おぬしの連れ合いとの約束は、これで果たすぞ」
ユウナギは驚きの余り、まだ思考回路が働かない。しかしコツバメは話を進める。
「どちらと話したい?」
と聞かれれば、ユウナギには要望がある。
「単純に話したいのはアヅミだけど、話さなくてはいけないのは大王の方ね」
「では、娘の方に乗り移るのじゃな。よし。私と額を合わせるぞ」
「待って。コツバメは、もうどこかへ行ってしまうの?」
ユウナギは彼女とももっと話をしたいし、できれば難しいことを考えずに遊びたいのだ。
「またいつか会おうぞ。会いたいと願えば、いつでも何度でも会えるのじゃ」
彼女の笑顔は実に朗らかで可愛らしい。
「うん。ありがとう」
言われた通りに彼女と額を合わせると、温かい力が流れてくる。これが神の力なのだろう。
ユウナギはコツバメの力で、アヅミの身体にするりと憑依した。裸体の彼女を自身のように操り、おもむろに身を起こす。
それに感付いた隣の男は、彼女のまだ覚めやらぬ眼を見つめ声を発した。
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