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王と王の会談
「お前、この女ではないな。悪霊が憑りついたか?」
「悪霊とは失礼ね」
ユウナギは彼に対面した。まだ他者の身体の中にいる不自然な感覚はある。しかし戸惑いは一寸たりとも見せられない。
「初めまして、大王。私は、現在あなたに睨まれている国の王。交渉に来たわ」
「……初めまして」
彼は形の存在せぬ、裸形の娘に纏わりつく気配に、その未知の力に、少しも驚いていない。
「小隊を国境に送り込み、邑民を脅かすのを止めていただけないかしら」
彼女には確かに見覚えのある、余裕綽綽の笑みを、彼は今も浮かべている。
「そちらが降伏すれば、今すぐにでも止めるが」
「私の首を差し出す。実権も無条件で渡すから、国のすべての民の安全を保証して」
返事は分かり切っているが、女王の意思表示はともかくしておかねばならない。
「お前だけでは足りない。国を牛耳る者の血を引く人間はすべて引き渡してもらおう。そいつらのさばらせておいたら、実権も何もない」
「それはできない」
「ならば交渉は決裂だ」
ユウナギは負けじと目前の彼を睨みつけた。
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