余興の主役に抜擢

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 決して譲るつもりはない確固な眼差し。しかしそれでいい。トバリにとって彼女の命は最重要だが、彼女の誇りも同様に守りたいものだ。彼女が自身で大王(おおきみ)と交渉したものを、阻むことはできない。しかもそれは、神の力を以って行われたのだから。 「しかしユウナギ様、これが罠という可能性も。女王を先んじて前に出させ、討つなり捕らえるなり、と……」 「大王は家来にそんなことさせない。むしろしくじったら笑いものにするのが楽しみって人よ、大丈夫。さぁて、サダヨシ。本腰入れて作戦を立てましょう」  ユウナギはサダヨシが大王に取り立てられるための、計画を練る意欲に満ちている。その笑顔は覚悟ができているかのように、男ふたりには見えた。 「やっぱりいちばん大事なのは第一印象。サダヨシならそれは既に合格よ。大王は多分、あなたのような美人、大の好物なの。ところで今から戦が起こるという風評は、民にどのくらい流すものなの?」 「それはあなた様のご希望通りに」   「みんなにはできるだけ、通常と変わらず過ごしていて欲しい。国の中をちゃんと回していてもらわないと。でも一部の民の協力も必要だから、まったく知らないでも困るわね」 「分かりました。そのように統制します」  実際そういったこともサダヨシの得意分野であった。 「“今から話す計画”が上手くいくように、噂の量、内容、範囲など、完璧な調整をお願い。私は南西、北西の二国に送る(ふみ)を書くわ」 「色よい返事は期待できますか?」 「分からない。でも包み隠さず書くつもり……。次は彼らの番だろうし」  ユウナギは無常の切なさを隠し切れず、窓際から遥か遠くを見つめた。
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