記憶の糸の接続

1/1
前へ
/59ページ
次へ

記憶の糸の接続

 その夜、ユウナギはサダヨシといた。彼女は昼間、彼女の考える「計画」の8割を彼に伝えた。今は残りの2割を埋めるよう、ふたりで考えているのだが。 「休まれなくてもよいのですか?」 「う~~ん。なんだかここまで出かかってるんだけど……」  ユウナギは下に向けた平手を首に当てる。 「何がですか?」 「いや、だから、それがね……ここまで出かかってるんだけど……」  次は目鼻のところまで平手が上がった。 「それ口を過ぎてますよ」 「あっ!!」  サダヨシの綺麗な顔を見つめた瞬間、ユウナギの脳天にとある男のとある言葉が蘇った。 「あの男は言った。“思わぬ拾い物”って」  彼女の独り言にサダヨシは耳を傾ける。 「……きっと、あなたが、その“拾い物”」  鳩が豆鉄砲をくらったようなユウナギの表情が、ぱっとまるきり晴れやかになった。“あの男”の喋りが頭の中で蘇り、それと、彼女の勘、ひらめきが繋がったのだ。 「彼はきっと中央に来る」 「え?」 「あなたは絶対大王(おおきみ)に受け入れられるから! だから、できるだけ派手に挨拶しましょう!」  曖昧だった計画の2割、それはそれを行う「時と場所」であった。これを埋め、かつ成功の確信を得た。  「勘」の部分も大きいが、それが巫女の、神より授けられし力。 「派手に? “人海戦術”のことですね?」 「そうね。大王は“その日”、きっと、“ここに”来る」  ユウナギは揺るぎない、勝気な視線を彼に投げかけた。 「?」 「私たちが戦に出払ったら、あなたはここ、中央で……。武器の準備はいらない、あちら側の間者に不審がられても困るしね。そう、徴兵()しないの」 「…………」  サダヨシは彼女の提言に聞き入るのだった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加