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記憶の糸の接続
その夜、ユウナギはサダヨシといた。彼女は昼間、彼女の考える「計画」の8割を彼に伝えた。今は残りの2割を埋めるよう、ふたりで考えているのだが。
「休まれなくてもよいのですか?」
「う~~ん。なんだかここまで出かかってるんだけど……」
ユウナギは下に向けた平手を首に当てる。
「何がですか?」
「いや、だから、それがね……ここまで出かかってるんだけど……」
次は目鼻のところまで平手が上がった。
「それ口を過ぎてますよ」
「あっ!!」
サダヨシの綺麗な顔を見つめた瞬間、ユウナギの脳天にとある男のとある言葉が蘇った。
「あの男は言った。“思わぬ拾い物”って」
彼女の独り言にサダヨシは耳を傾ける。
「……きっと、あなたが、その“拾い物”」
鳩が豆鉄砲をくらったようなユウナギの表情が、ぱっとまるきり晴れやかになった。“あの男”の喋りが頭の中で蘇り、それと、彼女の勘、ひらめきが繋がったのだ。
「彼はきっと中央に来る」
「え?」
「あなたは絶対大王に受け入れられるから! だから、できるだけ派手に挨拶しましょう!」
曖昧だった計画の2割、それはそれを行う「時と場所」であった。これを埋め、かつ成功の確信を得た。
「勘」の部分も大きいが、それが巫女の、神より授けられし力。
「派手に? “人海戦術”のことですね?」
「そうね。大王は“その日”、きっと、“ここに”来る」
ユウナギは揺るぎない、勝気な視線を彼に投げかけた。
「?」
「私たちが戦に出払ったら、あなたはここ、中央で……。武器の準備はいらない、あちら側の間者に不審がられても困るしね。そう、徴兵はしないの」
「…………」
サダヨシは彼女の提言に聞き入るのだった。
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