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11:ずっといっしょ
「ゆ‥き…」
薄っすらと目を開けておじいさんが僕の名前を呼んだ。
「くぅーん…くぅーん」
僕は積もっていた雪を掘って、おじいさんを雪の中から急いで助けた。
「お前を…また…1人にしてしまうことを…許してくれ…最期に…ホラ…ゆきの、…好きなみかんじゃ…ゆきに…食べ、させたくて…採りに…ゲホッ!ゲホッ!来たんじゃ…。ゆき、食べて…おくれ…」
おじいさんが涙を流しなら笑顔で微笑んだ。
けれど、差し出されたみかんは僕に届く前に地面に落ちてしまった。
「ワンワン!くぅーん…くぅーん…」
(おじいさん!おじいさん!しっかりして!…いやだよ…僕を…僕をひとりにしないで…)
僕は一生懸命吠えた。
だけど、僕の声がおじいさんに届くことはなかった。
大好きなみかんに目もくれず、僕はおじいさんの顔を舐める。
(おじいさん…)
動かなくなってしまったおじいさんに僕は本能で悟ってしまった。
(心配しないで、おじいさん)
(僕がそばにいるよ)
僕はおじいさんの体に寄り添うように体を丸めた。
(大好きなおじいさん)
(こんな僕を拾ってくれて…大切に育ててくれてありがとう)
(僕もおじいさんと一緒に眠ったら、ずっとおじいさんと一緒にいられるかな?)
(おじいさん…これからも僕はずっとおじいさんと一緒にいるよ)
(僕がそばにいる…ひとりじゃないよ)
おじいさんと過ごした日々を思い出しながら、僕はおじいさんのそばで
長い、長い眠りについた。
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