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8:ゆきの誓い
「前まではここでおばあさんと暮らしていたんじゃ…でもな?そのおばあさんが3年前に一足先に天国へ行ってしまった…それからはずっと1人で暮らしておった。おまえさんも最初は1人じゃなかったんじゃろう?」
おじいさんは僕の頭を撫でながら色んな事を話してくれた
「くぅーん…」
(そうだったんだね…僕も最初は優しいご主人の元で暮らしていたよ)
僕はご主人に応えるように鳴いた。
「そうかそうか…」
大きいけどとっても優しい手
僕を叩いたご主人様とは全然違う温もりのある手
僕は、目尻に水を浮かべるおじいさんの頬を優しく舐めた。
(おじいさん。泣かないで)
「心配してくれておるのか?おまえさんは優しい子じゃ…」
おじいさんは嬉しそうにしわくちゃの顔で笑うと、僕を抱きしめてくれた。
おじいさんは、僕に『ゆき』っていう名前を付けてくれた
冬に出会った雪のように真っ白い毛並みだから『ゆき』なんだって。
初めてもらった意味のある名前に、僕はすごく嬉しかった。
それから、僕とおじいさんの生活が始まった。
おじいさんとは毎日一緒に寝て、一緒にご飯を食べて、一緒に散歩をして、一緒にボール遊びだってしたし、おじいさんが育てている野菜や果物を畑に採りにも行った。
毎日がとても楽しかった。
今までのどのご主人様よりも優しくて、たっぷりの愛情を注いでくれた。
まるで本当の子供のように
だから、僕はおじいさんの言うことはなんでも聞いた。
嫌われて、捨てられることのない様に
でも、おじいさんは僕に一度も手をあげることはなかった。
それどころか、毎日優しく撫でてくれる。
そんなおじいさんが、僕は大好きだ。
だから誓ったんだ
(僕は、なにがあってもおじいさんと一緒にいるよ!ずっと、ずっと一緒だよ!)
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