8:ゆきの誓い

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

8:ゆきの誓い

「前まではここでおばあさんと暮らしていたんじゃ…でもな?そのおばあさんが3年前に一足先に天国へ行ってしまった…それからはずっと1人で暮らしておった。おまえさんも最初は1人じゃなかったんじゃろう?」 おじいさんは僕の頭を撫でながら色んな事を話してくれた 「くぅーん…」 (そうだったんだね…僕も最初は優しいご主人の元で暮らしていたよ) 僕はご主人に応えるように鳴いた。 「そうかそうか…」 大きいけどとっても優しい手 僕を叩いたご主人様とは全然違う温もりのある手 僕は、目尻に水を浮かべるおじいさんの頬を優しく舐めた。 (おじいさん。泣かないで) 「心配してくれておるのか?おまえさんは優しい子じゃ…」 おじいさんは嬉しそうにしわくちゃの顔で笑うと、僕を抱きしめてくれた。 おじいさんは、僕に『ゆき』っていう名前を付けてくれた 冬に出会った雪のように真っ白い毛並みだから『ゆき』なんだって。 初めてもらった意味のある名前に、僕はすごく嬉しかった。 それから、僕とおじいさんの生活が始まった。 おじいさんとは毎日一緒に寝て、一緒にご飯を食べて、一緒に散歩をして、一緒にボール遊びだってしたし、おじいさんが育てている野菜や果物を畑に採りにも行った。 毎日がとても楽しかった。 今までのどのご主人様よりも優しくて、たっぷりの愛情を注いでくれた。 まるで本当の子供のように だから、僕はおじいさんの言うことはなんでも聞いた。 嫌われて、捨てられることのない様に でも、おじいさんは僕に一度も手をあげることはなかった。 それどころか、毎日優しく撫でてくれる。 そんなおじいさんが、僕は大好きだ。 だから誓ったんだ (僕は、なにがあってもおじいさんと一緒にいるよ!ずっと、ずっと一緒だよ!)
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!