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9:お爺さんの異変
おじいさんの様子がおかしくなったのは、僕とおじいさんが出会ってから7年が経った頃だった
「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!!」
おじいさんは激しい咳をよくするようになった。
寝ている時はいっぱい汗をかくようにもなったし、熱っぽいと言って1日のほとんどを寝て過ごす日も多くなった
「くぅーん…くぅーん…」
(大丈夫?おじいさん、大丈夫?)
僕は心配そうに鳴きながらおじいさんの傍に寄り添うことしかできなかった。
おじいさんは僕を助けてくれたのに、僕はおじいさんを助けてあげることができない。
それがすごく悔しかった。
それでもおじいさんは優しく笑って僕の頭を撫でてくれた。
「心配はいらんよ。ゆき…わしなら大丈夫じゃ…」
「くぅーん…」
僕はおじいさんが辛くて苦しいことを感じ取っていた。
(きっと僕に心配をかけないように言っているだけだ…僕を拾ってくれて、たくさんの愛情をくれたおじいさん…今度は僕がおじいさんを助けるね!)
僕は毎日おじいさんの傍に寄り添いつつ、畑まで走って野菜や果物を採りに行っておじいさんへ届けた。
「ありがとうな、ゆき。ゆきが持ってきてくれた野菜と果物は、今まで食べた野菜の中で1番じゃ…」
おじいさんはとても喜んでくれて、大きくて優しい手で僕の頭を撫でてくれた。
おじいさんならきっと大丈夫。
信じ切っていた僕はまだ知らなかった。
おじいさんの体が限界を迎えていることに。
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