正直

1/1
前へ
/13ページ
次へ

正直

正直に行き過ぎてきた 何事にも上手くいかなかった 大学生の頃、ビデオレンタル店でバイトしていた シフトで気になる女の子と相棒となった時、よくこう言われた 「えっちなビデオを店員価格で借りるのいいけど、延滞しないでね」 そんな酷いこと言っといて、彼女は決まって帰り際に、食事やお茶に誘ってきた 僕は早く帰ってビデオ見たかったので、取り合わなかったのだが、ある日、彼女と仕事終わりに喫茶店に行くことにした 「カランコロン…お好きな席にどうぞ」 (他愛もないバイト話が続き、本題がない) 「正直に言うわ、私じゃ駄目ですか…」 「正直に言うよ。だめではないけど、駄目かな」 正直僕が今結婚生活を送れているのも、その彼女と結婚したからだと思う お互い好きに生活している 本屋に行っても、彼女はたまに、エッチな本を勧めてくる 今では少なくなったビデオレンタル店でも、わざわざアダルトの暖簾をくぐってVHSを取ってきて勧めてきたりする 「正直うざいんですけど。」 彼女は決まってそんな時、ゲバゲバと笑う 僕もつられてガハガハと笑う 正直こんな楽しい瞬間は二度とないと正直思う 何度でも 思う
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加