52人が本棚に入れています
本棚に追加
第35話 ただそれだけ
「おやつ買って帰った!コンビニスイーツ!」
湊がマンションの部屋の防音室のドアを開けると、すぐに眉間にしわをよせた翡翠が目に入った。
「怖いんだけど」
「比呂にもダメだしされまくってて…」
「休憩しよう。プリン買って来た」
「プリン!」
翡翠が一番に部屋を出て行った。
「どう?」
「上手いんだけど、ただそれだけ」
比呂が無機質に答えた。
「他の歌だといいんだけ、やっぱ、愛だの恋だのになったら途端に一辺倒って言うか…」
「そっか。禅はどう思う?」
「普通には上手い」
「プリン食べろ」
「そうする」
全員が部屋を出て行くと、湊は床に置かれたままの楽譜を手に取り、佐和田ちさとの「片思い」の音源を聴いた。
最初のコメントを投稿しよう!