第35話 ただそれだけ

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第35話 ただそれだけ

「おやつ買って帰った!コンビニスイーツ!」 湊がマンションの部屋の防音室のドアを開けると、すぐに眉間にしわをよせた翡翠が目に入った。 「怖いんだけど」 「比呂にもダメだしされまくってて…」 「休憩しよう。プリン買って来た」 「プリン!」 翡翠が一番に部屋を出て行った。 「どう?」 「上手いんだけど、ただそれだけ」 比呂が無機質に答えた。 「他の歌だといいんだけ、やっぱ、愛だの恋だのになったら途端に一辺倒って言うか…」 「そっか。禅はどう思う?」 「普通には上手い」 「プリン食べろ」 「そうする」 全員が部屋を出て行くと、湊は床に置かれたままの楽譜を手に取り、佐和田ちさとの「片思い」の音源を聴いた。
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