5/7
228人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「ああ、凛奈か。話には聞いていたが、ついに結婚するんだな」 「え? え? なに? どういうこと?」  佑月の口から出てきた言葉が衝撃的で、渉は目を白黒させてしまった。  過去に戻った話は夢だったはずだ。  今の時間軸では、凛奈は………… 「記憶が混乱しているんだな。凛奈が昔、俺の婚約者だったことは覚えているか? 渉と出会った頃には別れ話が出ていて、向こうも好きなやつができたって言うから、俺もそれで気持ちを切り替えて、いい友人関係に戻ったし、もう未練なんてないって話したはずだ」  何を話しているのか、これはまた夢なのか、渉は口をパクパクさせて混乱してしまった。  そんな渉の様子を見て、佑月は順を追ってちゃんと話してくれた。  佑月の話によると、同じ高校で友人だった二人は、気が合ったので付き合うことになったそうだ。  お互いの両親の仲が良く、将来結婚しなよと言われて、婚約という話になった。  しかし五年前、佑月の仕事の忙しさが原因で、二人は喧嘩ばかりで、ついに別れようという話になった。  凛奈が他に好きな人ができたというのが決め手になって、二人は何度も話し合い、友人関係に戻ったそうだ。  別れてからも度々カフェで会っていたのは、佑月が会社の独立を検討していて、凛奈はその広報として手伝いをしていたからだそうだ。  事故の時の話も教えてくれた。  その日は、凛奈が新しい彼氏を紹介するというので、三人で食事をする予定だった。  佑月が仕事に遅れることを連絡したら、凛奈は彼氏と駅前で待ち合わせて、佑月の職場近くの居酒屋に、待ち合わせ場所を変えることにしたらしい。  仕事を終えた佑月に、凛奈が車の衝突事故に巻き込まれて、怪我を負ったと連絡が入った。  急いで病院に駆けつけると、凛奈は近くにいた若い男性に助けられて、幸い頭に少し怪我を負っただけだけで命に別状はなかった。  その時に新しい彼氏を紹介されて、彼氏が海外勤務になったので、凛奈も付いていくという報告をされたと教えてくれた。 「しょ……招待状は? カフェでそんな話を……てっきり結婚式を予定していたのかと……」 「なんだ、そんな話を覚えていたのか。設立記念のパーティーを企画していて、その時の招待状を凛奈に作ってもらっていたんだ」  頭がますます混乱してしまった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!