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「ああ、凛奈か。話には聞いていたが、ついに結婚するんだな」
「え? え? なに? どういうこと?」
佑月の口から出てきた言葉が衝撃的で、渉は目を白黒させてしまった。
過去に戻った話は夢だったはずだ。
今の時間軸では、凛奈は…………
「記憶が混乱しているんだな。凛奈が昔、俺の婚約者だったことは覚えているか? 渉と出会った頃には別れ話が出ていて、向こうも好きなやつができたって言うから、俺もそれで気持ちを切り替えて、いい友人関係に戻ったし、もう未練なんてないって話したはずだ」
何を話しているのか、これはまた夢なのか、渉は口をパクパクさせて混乱してしまった。
そんな渉の様子を見て、佑月は順を追ってちゃんと話してくれた。
佑月の話によると、同じ高校で友人だった二人は、気が合ったので付き合うことになったそうだ。
お互いの両親の仲が良く、将来結婚しなよと言われて、婚約という話になった。
しかし五年前、佑月の仕事の忙しさが原因で、二人は喧嘩ばかりで、ついに別れようという話になった。
凛奈が他に好きな人ができたというのが決め手になって、二人は何度も話し合い、友人関係に戻ったそうだ。
別れてからも度々カフェで会っていたのは、佑月が会社の独立を検討していて、凛奈はその広報として手伝いをしていたからだそうだ。
事故の時の話も教えてくれた。
その日は、凛奈が新しい彼氏を紹介するというので、三人で食事をする予定だった。
佑月が仕事に遅れることを連絡したら、凛奈は彼氏と駅前で待ち合わせて、佑月の職場近くの居酒屋に、待ち合わせ場所を変えることにしたらしい。
仕事を終えた佑月に、凛奈が車の衝突事故に巻き込まれて、怪我を負ったと連絡が入った。
急いで病院に駆けつけると、凛奈は近くにいた若い男性に助けられて、幸い頭に少し怪我を負っただけだけで命に別状はなかった。
その時に新しい彼氏を紹介されて、彼氏が海外勤務になったので、凛奈も付いていくという報告をされたと教えてくれた。
「しょ……招待状は? カフェでそんな話を……てっきり結婚式を予定していたのかと……」
「なんだ、そんな話を覚えていたのか。設立記念のパーティーを企画していて、その時の招待状を凛奈に作ってもらっていたんだ」
頭がますます混乱してしまった。
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