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第一レイックス号の、処女航海の行く先は、インディ国だった。
役目を終えた、船大工のリッキーとギリアンを、国に返す為も有ったが
船長のリーが、最もよく知っている航路だという事も有った。
船には、エルフの国の絹糸や絹織物、薬草などが積み込まれ
ローリーと長の娘エシリーが、その管理をする為に、乗り込む。
アーガスの鉱物や、それを使って作った、調理器具や食器なども積みこまれ
その管理には、コナーとその部下、アランがあたる。
シム島の紅茶や、緑茶、それを使って作った菓子類は、ケニーが管理する。
小麦、小麦粉、チーズ、ソーセージ等は、最も大量に積み込まれ
ウィリーとマルコム、近衛兵のニールも、その管理をする。
アンは、ジリアンに頼まれた海苔と、ジャイの葉の漬物を、担当し
その他にも、フレイラと一緒に、乗組員の食事作りも、担当する。
と、それぞれの役目も決まり、いよいよレイックス号は、港を離れる。
「気を付けてね~」「良い航海になります様に~」
「ウィリアム様~アン様~お願いします~~」見送る人も、見送られる人も
互いに、手を振り合い、レイックス号は、なぎの海へと順調に滑り出した。
そのレイックス号の食事は、普通の船の食事とは、変わっていた。
普通は、食事は一種類か、二種類で、皆、同じ物を食べるが
レイックス号は、街の食堂の様に、自分が食べたい物を注文すると
直ぐにそれが出て来るのだ。
だから、カレーを食べている者が居たり、海苔巻きを食べている者が居たり
天婦羅や、刺身を食べている者も居たりする。
「おっ、それ、旨そうだな」「鳥の唐揚げだそうだ、旨いぞ~」
「じゃ、俺も、それにするよ」等と、賑やかだった。
家では、食べた事の無い、美味しい料理が食べられるのも
アン様が、料理番として、居てくれるからだと、皆は、感激する。
初めての船旅で、船酔いに苦しむ人を助けるのも、アンの仕事だった。
「アン様、すっかり良くなりました、有難うございます」
「アン様が居てくれて、本当に良かったな~」と、ここでも皆に感謝される。
嵐に合う事も無く、船は順調にインディに着いた。
「ウィリ~、アン~~」キルアが、迎えに来て居る。
「キルア、君のお陰で、こんな良い船が出来たよ」
ウィリーは、キルアの肩を抱いて、お礼を言った。
「何の、これで、我々の船は、他の国を回れます」キルアも、嬉しそうだった
積み荷の殆どを、インディに降ろし、代わりに米をどっさり仕入れる。
船大工の親子は、ここで降りる、だが、リッキーは
久しぶりの家族の元へ、帰ったが、息子のギリアンは
「船に、何か不具合が有った時の為に、俺は、このまま乗って行くよ」と
船を降りなかった「それは、嬉しい事だけど、本当に良いのか?」
ウィリーと、リーが、そう聞いたが「良いんです、これも勉強ですから」
ギリアンは、そう答えたが、仲良くなった皆と別れるのも辛いし
毎日、珍しくて美味しい料理が、食べられる事も、大きな魅力だった。
「どうします?もう積み荷は、殆ど有りませんが」と、リーが聞く。
絹糸や絹織物は、真っ先に、王家が買い占めてしまい
薬草が、少々残っているだけだったし、アーガスの鉄や銅、錫なども
全部売れて、残っているのは、食器類だけだった。
海苔もジャイの漬物も完売で、ケニーの菓子が、僅かに残っている。
「これじゃ、小さな国にしか、行けないな~」「じゃ、島を巡りましょう」
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