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「はい、この倉庫は、神しか持てない倉庫で、入れた物は
そのままの状態で、保存されます」「そのままの状態?」
「はい、例えば、冷たい水の入った容器を入れたとすると
何年後に取り出しても、冷たいままなのです」「え~っ不思議ですね」
そんな事、有り得ないだろ?と思いながら、そう言った。
「この倉庫に物を入れたり、入れている物を取り出したりする時は
この青いボタンを押して下さい」と
昌子の体の右側に現れた、青いボタンを示す、青いボタンの横には
黄色いボタンも有った、何でボタンだけ、こんな所に?と、気味が悪い。
だが「もう一つの、黄色いボタンを押して下さい」と、言われるまま
黄色いボタンを押すと、空中に、昌子が、スーパーで買った
レトルト食品や、野菜などが見えた。
「この黄色いボタンは、中に何が入っているかを、確認するボタンです」
何も無い空間に、その品物だけが見えている、どうなってるの?
「べ、便利ですね、それで、私のカートは?」
驚きで、思わず変な事を聞いてしまった。
「車に吹き飛ばされて、バラバラになりましたが
中に入れていた袋は、傍の草むらに落ちていたので、持って来たのです」
「車に?私、車に轢かれたんですか?」「いいえ、轢かれたのはカートで
貴女は、あおりを食って倒れ、失神していただけだったのですが、、」
新人の天使は、死んだと勘違いして、魂を持って来てしまったのだ。
本当に死ぬ人は、もう一つ向こうの道で、死ぬはずだったと言う。
寿命が尽きていないのに、魂を持って行かれ「胸が、胸が」と
苦しんで死んだので、心臓発作だろうと、看取った医師は言ったそうだが
昌子には、そんな苦しんだ記憶は無かった。
「本当に、申し訳ない事を、、」と、天帝は、また謝り、倉庫の話に戻った。
「この倉庫には、山や、湖などの大きな物は入りません」言われなくても
そんな物、倉庫に仕舞えるわけ無いでしょと、昌子は呆れる。
「まぁ、天帝の私の倉庫には、山でも湖でも入りますが」
『入るんかいっ』と、昌子は驚きつつ、心の中で突っ込む。
「こんな家とか、こんな船とかなら、入りますよ」と、空中で見せたのは
高層マンションと、豪華客船だった。
『そんな物、入れようにも手に入らないわ』昌子は、また突っ込む。
そして聞く「いったい、どの位入るのですか?」「無限です」
「む、無限~っ」昌子は、大きな声を上げた。
「神の倉庫ですからね、あ、そうそう、この倉庫に不随しているバックも」
と、天帝は、ポシェットのような物を、昌子の肩に掛けたが
そのポシェットは、髪の毛一本程の、重さも感じなかった。
「この中に入れた物は、時間が経つと倍になります」「倍にって?」
「さっき、この事を見せる為に、貴女の荷物を一つ、この中へ入れました。
バックを、逆さにして下さい」と、言われて、逆さにすると
ごろごろと、スーパーで買った醤油が、8本も出て来た。
「Ⅰ時間で2本に、2時間で4本に、3時間で8本になったのです」
それにも驚きだったが、こんなに沢山の醤油が入っていたのに
何で重さを感じなかったのか、その方が不思議だった。
それを聞くと「それは、神の持ち物だからですよ」と、涼しい顔で言われる
「それにしても、こんなに沢山の醤油、どうすれば、、」
「だから、倉庫が有るのです、さぁ、入れて見なさい」
青いボタンを押すと、8本の醤油は、すっとその中に入り
黄色いボタンを押してみると、きちんと8本並んでいるのが見えた。
「その2つの道具と、72年間生きてきた知恵を使って、新しい所で
しっかり生きて下さい」天帝がそう言った途端に、昌子の意識は無くなった。
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