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「いつも…先越される。っていうか、ずっと願ってるのに、度胸がなくてモタモタして迷ってる間に、咲世が叶えてくれる」
耳元で囁いた後、私の手を外して握りしめた彼が、上から私を見下ろす視線は強いけど、甘い。
「ずっと、そのまんまじゃ嫌だから。嫌なら言って?」
私の耳の下、顎の辺りを指でそっと撫でるいつもの仕草のあと、彼の唇が私の唇に柔らかく触れた。一度離れたのを寂しく思ってしまう私の顔を見て、彼が優しく笑った。
「止めるわけないだろ?顔が見たくなっただけ」
そう言って、確かめるように何度も唇に触れては離した。目を開けていられなくなった私が目蓋を下ろすと、ぎゅっと腰を引き寄せられた。肩に掛けたままだった保冷バックが、がさがさと鳴った。
「橘さん・・・ここで邪魔するんだ」
そう言って彼が保冷バッグを取り上げて、靴箱の上に置いた。
「もうちょっとだけ」
もうちょっとでおしまいなんだ。
なんて寂しく思っていたら、さっきのキスとは全然違った。唇から食べられるんじゃないかって思うようなキス。顔の角度を変えるときに彼の口から洩れる息使いに、胸が熱くなる。
彼の舌を噛まないように、必死に口を開けているくらいしか私にはできることがない。
私を抱き上げた後、靴箱の保冷バッグを掴んだ彼は、歩いて向かった冷蔵庫にそのまま入れてしまった。
「食べるのは後。今は、咲世を・・・抱きたい」
“嫌なら言って?“は続いてるのか、尋ねることなく彼が私を見てるから頷いた。
もうさっきからずっと、触れて欲しかった。
「この髪型、俺が好きな咲世のここがよく見える」
耳下の骨に彼が口づけたら、びっくりするような息が洩れて思わず彼の顔を見た。おかしいと思われたどうしようと思って心配していたら、彼が真っ赤になって照れてた。
「可愛くて色っぽいって、最高なんだけど?」
「・・・どうしたの?さっきから」
「思ってて言えなかったこと、言った方が良いのかなって思って」
「…恥ずかし」
「それもかわいい。可愛くて、もっと触れたくなる」
“ちょっとやめてください”って言葉は彼の唇に飲み込まれてしまった。
もう私は彼の布団の上。体に彼の体の重さがかからないように気遣われてるのは分かるけれど、彼のキスには余裕なんて無かった。
私にはもっと余裕がない。キスだけで、これはもしかして喘ぎ声とか言うやつですか?って声と息を漏らしている気がする。
「隣の男に聞かせたくないから・・・なるべく堪えて?」
「だって・・・」
「もっと気持ちよくしてあげたい」
だ、だいじょうぶですか?毅さん。
そして、大丈夫?私。

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