蠢爾(しゅんじ)する者

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フィリトは次元の剣を手にするなり、遠森魚正の話をし始めた。「この剣。次元の剣を僕かレフィルではない誰かが持つことを遠森先生は酷く否定していた。朝露か夜霧を長く深く、鮮やかに雅やかに持ち続けた人間を好むと先生は仰った。パワーマンは確かに先生の理想を超える者だったけれども普遍性は皆無だったよな。」フィリトと共に遠森魚正の墓の前に来た。「まさか!遠森魚正とパワーマンは同一人物か?」俺は冷や汗をかいた。青褪めていく自分は宛ら、斬り捨てて来た連中のその状態だろうが、俺は焦っていた。「気付いたか…。遠森先生は銀河フィラメントを介し、パワーマンと成られたのだ。僕やレフィルよりも次元の剣に相応しい人間は最早それしか考えられない。」陰鬱に次元の剣を見つめるフィリトは涙を流し、遠森魚正の墓の一部分を押した。その部分は窪み、墓はみるみる内に隠し階段が現れたのだった。「キモっ!…正直、次元の剣どうしようかと俺なりに考えていたけど、これはキモいな…。」俺は痛嘆していた。フィリトは頷き、静謐に階段を降り始めた。「ちょっ…待て待て!」俺は考える間もなくフィリトの後を追うのだった。
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