蠢爾(しゅんじ)する者

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リライアンの屍が腐り、光を放ち始めた。俺は善徳と気が良くなり、歓喜していた。「ありがとう…レフィル。夜霧をここまで高めてくれてありがとう。」墓の内部にて、木霊する声。遠森魚正だ。「私は屑鉄を家々に募り、その屑鉄を鍛え上げ、刀を打った…鋼の域にまで達した夜霧はどうやら盗賊に盗まれた様だったが…レフィル…君はどのようにして夜霧を?」脳裏に焼き付く遠森魚正の声。俺は半ばフィリトの所為にしていた。フィリトのやつが正義感剥き出しな所為だと…。「遠森魚正は何人居るんだ?俺は確かに遠森魚正当人から譲り受けた。絶対だ…。」俺は顔を顰め、苦痛に訴えていた。遠森魚正の声でありながら、俺の都合はイカれていた。宇宙の真実は余りにも酷かった。俺は俺でしかない。「レフィル…リライアンは鋼で造られた木偶人形さ。それをいとも容易く斬り裂いた。レフィルは…凄いやつだな。」フィリトは天井を仰いでいた。そうか…フィリトが干渉してか遠森魚正の声、言葉がひん曲がってるんだろう。「あっははっ!フィリト…遠森魚正の声は聞こえるか?今墓のそこいら中に響いてるよな。」俺は笑んでいた。フィリトもそして笑んでいた。「いや…聞こえないな。…レフィル。その夜霧。元々は屑鉄だったんだぞ。凄いやつだな。あっははっ!」フィリトはリライアンを担ぎ上げ、墓の奥へ奥へと進んで行った。「知る由も無し!!」俺は空を乱切りした後、さっさと墓から出たのだった。 -完-
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