工場産まれのゴッチャ

　ゴッチャが飛びた先には「キティミル」「キティミーツ」「ポニーミル」「ベビーミル」などの工場が多く建ち並ぶ通りだった。道路では輸送車や救急車が頻繁に通りかかっていて、事故でひかれたと思われる動物の死体が、普通に転がっている。
ミルズ通りの人々は、ゴッチャを見るや「珍しい生き物がいる！」「撮影して投稿しよう」などとスマートフォンで容赦なく撮影するが、その反響は芳しくなかったようだ「これＣＧだっ！」「加工してる奴」「ペットを加工出来るアプリあったよね、タップトップだったか」「なんじゃこりゃミステリーに画像送れ！」「ナニソレ珍絶景でしょう」「不気味体験アンビバレンスでしょう」「動物に詳しい内藤先生なら知ってるかもしれ無い」などと散々なものだった。ゴッチャは人との話しかたを知らない。が、人の言葉は理解出来ていた。
結局、自分は『人によって盛られた存在』か『最初からいなかった』ものと思われているのだという事はわかった。だったらどうして母犬は自分を産んだのか、訊いてみたいが、母犬は既に何回か出産を繰り返していたようで、百一匹めのゴッチャを出産と同時に力尽きてしまっていた。そんな中、ゴッチャは一人の少女と出逢う。
「ねぇ、あなた、一人？」
「そうよ、何か、ご用？」
「話せるのね、すごい！」
「うん、まあ」
「パパとママは？」
「いない。パパは知らない」
「そっか、わたしも一人よ」
「同じね」
「ねぇ、友達にならない？」
「友達？」