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それからゴッチャとパピーは同じベッドで眠る事にしたが、玄関から人の声がする。
「脱走した人面犬は確かこの辺に連れていかれたと聞いた」
「人に危害を加えてなければいいが、住人は無事か?」
「この家は子供がいたな。両親は?」
「父親は工場の職員だ、母親はどこから来たのかわからないが」
どうやら、脱走した工場の職員が、自分を探してここまで追って来たようだ。
「私と一緒にいたら、パピー、あなたも不幸になってしまう。でも、お別れはしたくない」
このままここにいてはパピーの身にも危険が迫るが、おいていってしまうと、また一人ぼっちになってしまう。また工場に追われる生涯を送るが今度は誰が拾ってくれるかわからない。それは自分が傷付きたくないだけ、孤独になるのが辛いからだ。ここまでよくして貰っても、まだ自己中心的な事を考えている自分が恥ずかしい。そう思うとゴッチャは、ベッドからするりと抜け出した。
「何も出来なくても友達でいてくれたパピーにだけ、出来る事、漸く見付けた」
たった一つ、友達の為に出来る、最初で最後の恩返し。ゴッチャは意を決すると、玄関の前に歩き始めた。
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