それも、家族

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 昨夜降った雪が溶けている。信号待ちのタイミングで辺りを見回すと、道路も凍っておらず危険性はなさそうだ。  青信号になると、ボクはとっさの判断でハンドルを左に切る。  こっちは山間部を横切る道は積雪や凍結した状態だと危ないが、路面がこれなら何とかなるだろう。  朝の通勤時間帯で、ボクは急いでいた。だから近道となるこのコースを選んだのだが、進んだ先で想定外のことが起こった。  木陰から何なら黒い物体が道路に飛び出してくる。ボクは急ブレーキをかけた。  犬……。どうしてこんなところに飼い主なしでいるのか? 主人とはぐれた迷い犬か……?  よく見ると、その犬は黒柴だ。道路のど真ん中に立ち尽くし、運転席にいるボクを見つめている。クラクションを鳴らしても、退こうともしない。  幸、対向車も後続車も来なさそうだからボクはそのまま車を停め、運転席から外に出た。 「おい、お前。どうしたんだ? こんなところにいたら車に轢かれるぞ」  犬の前にしゃがみ込んで話しかける。それでもこの犬は動こうともしなかった。  潤んで、ピュアな目をしたこの犬は、ボクにすり寄って来る。  本当はこの犬を見捨てて、早く職場に行きたかったが、……見捨てることができなかった。  ため息交じりでケータイをポケットから取り出し、職場に遅刻することを伝える。遅刻の理由は、不法に捨てられた犬の保護だと伝えると、意外にも上司は快く許してくた。 「おい、とりあえず、ここに乗れ」  助手席のドアを開けると、この柴犬は、慣れたように車に乗り込んでくる。まるで車に乗せてくれるのを待っていたかのようだ。  このまま車を走らせ、途中ショッピングセンタに立ち寄って水と餌、それに安い犬用食器を買って、駐車場で与えてみた。黒柴は驚くほどのスピードで、餌や水に食らいついていく。 「そうか、腹が減ってたのか……」  黒柴はかなりの量の餌を平らげた後、再びボクの車に乗った。
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