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仔犬はちぎれんばかりに尾を振り、立ったり座ったり、激しく足踏みをするなどを繰り返した。
星の詰まった目は、まっすぐ私の指先にあるものをとらえて離さない。やはり、彼女の目的はフユフユだった。
久々に手に取ったフユフユは、思っていたよりも2回りほど小さく、埃でべたついていた。
私はフユフユを投げた。それは襖に当たって、情けない声で転がる。仔犬は大喜びでそれに飛びついた。未練は、ない。
「フユフユ、あげちゃってよかったの? グチャグチャのドロドロになっちゃうわよ?」
そう言う母は、少し悲しそうだった。
でも、私は大丈夫。もうフユフユを卒業したのだから。犬の排泄物の処理もできるくらい、お姉さんになったのだから。
仔犬はボールを前足で抑え、肉を貪るように綿を出していく。途中、くっちゃくっちゃと音をたてては、歯に絡まった繊維をとろうと口をパクパ クさせていた。そして得意そうにこちらを振り返り、再びかぶりつく。かぶりついて、今度は激しく横にふる。すると「フユフユ」と音がする。彼女は面白くなって、それらの動作を繰り返す。
流星群の、目。私は仔犬に近づき、背を撫でた。息遣いが、生きものだった。
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