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ある日のことだった。
フユフユは抜け殻になった。もう弾むことも、転がることもない。
所詮、乳幼児向けのおもちゃだ。誰も傷つかない素材のそれは、たくさん遊ばれて楽しまれて死んだ。おもちゃを全うした。
「もうばっちいから捨てようね」
私は汚れたフユフユを、蓋つきのゴミ箱に落とした。湿った重みのある音がし、あたりは静まり返る。
私の隣で、仔犬が鼻を鳴らした。行儀よく座り、私を見上げている。ふわりと捲れた耳が、彼女の顔周りを貧相に見せた。
そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。
私は仔犬の小さな頭を撫で、床に散らばる綿を回収した。
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